ほめる教育は間違っている?「ほめるな」伊藤進(講談社現代新書)
こんにちは、りんた( @rintaed )です。
最近では、Yahoo!ニュースやテレビなどで「教育」に関する記事がとても多く扱われて
います。教育に関する記事を見ない日はないほどです。
それだけ、大勢の方にとって、「教育」は興味関心のあるワードなんだと思うと、嬉しさもありますが、キュッと身が引き締まる思いもあります。
さて、今日ご紹介するのはこの本
伊藤進先生の著書
「ほめるな」(講談社現代新書)
題名を見ただけで、強烈なインパクトが残る「ほめるな」。
「ほめる教育」「子どもはほめて伸ばす」というようなことが広く言われている中で、なぜ、伊藤先生は「ほめるな」を執筆されたのか、本を読んで考察していきたいと思います。
ほめる教育のメリット
今の日本の教育では「ほめる」ことがとても重要視されています。
学生の頃は、耳にタコができるくらい「子どもたちは、ほめて伸ばすべきだ。」と言うようなことを、何回も聞きました(笑)
ネットで調べてみても
「ほめて伸ばすことで、その子の可能性を大いに引き出せることが出来ます。」
的なことが、いろいろな記事で書かれています。
実際現場でも
「子どもはほめて伸ばす。ほめて、価値づけをする。」
ということが言われています。
ではなぜ、ここまでほめる教育が強く言われているのでしょうか?
ほめる教育をすることによって、子どもたちには次のメリットがあります。
- 自己肯定感が高くなる。
- 自尊感情が強くなる。
- 自己効力感が強くなる。
自己肯定感ってなに?
自己肯定感とは、自分のあり方を積極的に評価できる感情、自らの価値や存在意義を肯定できる感情などを意味する言葉です。
自尊感情ってなに?
自分には価値があり尊敬されるべき人間であると思える感情のこと。
自己効力感ってなに?
人が何らかの課題に直面した際、こうすればうまくいくはずだという期待(結果期待)に対して、自分はそれが実行できるという期待(効力期待)や自信のことを自己効力感という。
https://kotobank.jp/word/自己効力感-178781
自分に自信を持てる子、自分の存在を肯定的に認められる子
簡単にまとめると、自己肯定感も自己効力感も自尊感情も、自分に自信を持つときの感情を表しています。
かみ砕いて言うなら
「僕にはできる!!」
「私は○○が得意!」
というような感じです。(曖昧ですみません(笑))
これらの感情は、世界的に見て日本人は低いことはとても有名です。
よく言えば日本人の謙虚さがでている。
悪く言えば自信がない。
一般の方でも聞いたことがある方もいらっしゃると思いますが、
「PISAテスト」
という、OECDが行っている世界的なテストがあります。
このテストでは、子どもたちの学力を分析することが出来、国ごとどの能力が高く、どんな能力が低いのかデータを出すことが出来ます。
日本はこのテスト結果で、世界的に見ても非常に自己肯定感(自分に自信があるということ)が低いという結果が出ました。
「謙虚」って私個人的にはとても素晴らしいものだと思います。
自分自身はまだまだ未熟であると考えながら、学び続けていく姿勢。
これは、人として必要なスキルの一つなのではないでしょうか。
しかし、謙虚さと、自分に自信がないことはイコールではありません。
自信がないというのは、自分を否定的に捉え、多くのチャンスを失ってしまっている状態だと思います。
そんなのもったいない。
ものすごいスピードで、世界が変わっていく中で、少しでも立ち止まればおいて枯れてしまいそうになるのに、自分自身が原因で自分にブレーキをかけてしまうのは、とってももったいないことだと思います。
だからこそ、子どもたちの自尊感情、自己肯定感を高めるために「ほめる教育」というものが注目されているのです。
ではなぜ、自己肯定感などを育むことが出来るといわれているのに、
「ほめるな」と伊藤進先生はおっしゃるのでしょうか。
ただほめるだけでは子どもは育たない。
伊藤先生曰く、ただほめるだけでは子どもは成長しないとおっしゃっています。
「ほめれば子どもは伸びる」
「ほめれば子どもはいうことを聞く」
このように、ほめることの本質を理解しないで、ほめることを行うと
子どもたちは、主体性を失い、ほめられるために行動するような
人間になってしまうと言います。
例えば、みなさんの中に、「テストで100点取ったらお小遣いをあげる」というシステムを経験されたことのある方はいませんか?
すくなくとも、友達がそのようなシステムを採用していたと聞いたことがある方は多いと思います。
このように、何かに対して褒美を与え、やる気を出させることを外発的動機付けと言います。逆に、自分から興味関心を抱き、物事に取り組むことを内発的動機付けと言います。
実はこの外発的動機付けが問題なんです。外発的動機付けは、一時的にはやる気につながりますが、長期的にみるとそのやる気は持続しません。また、成長速度も遅く、褒美のために行動することしかできなくなってしまいます。
伊藤先生は、ここ最近強く言われているほめる教育では、この外発的動機付けになってしまい、子どもに成長を促すことが出来ないといいます。
ほめられなければ動かない、ほめられないと行動しない
こんな人が増えたら困りますよね(笑)
教育の真の目的は、子どもの自立にあります。
その目的と照らし合わせると、ただほめるだけのほめる教育では
子どもは育ったとは言えないのです。
どのようにほめればいいのか。
それではどのようにほめれば、真の「ほめる教育」と言えるのでしょうか。
伊藤先生は、「愛情をもってほめることが大切である」と言います。
(本の中では「インタラクティブ支援」と言っています)
一見、「そんなこと当たり前だよ」と思われる方もいるかもしれません。
しかし、愛情をもってほめることはいざ生活に目を向けると、忘れがちになっていることが少なくありません。
ほめるときは一人の人間として対等な立場からほめることが大切なのではないでしょうか。
「よくできたね、すごいね」と、簡単に伝えてしまうのではなく、心から伝え、伝えっぱなしで終わるのではなく、双方向でコミュニケーションをとることが、伊藤先生の言うほめる教育のあるべき姿なのではないでしょうか。
まとめ
この「ほめるな」には、現代に蔓延する「ほめる教育」に疑問を抱き、
真のほめる教育とはどのようなものなのかが書かれています。
ほめることの本質はどのようなことなのか、具体例も書いてあり、
とても分かりやすいです。
大変勉強になりました。