「教えるということ」
大村はま先生「教えるということ」(ちくま学芸文庫)
この本は日本の教育界伝説のレジェンドである大村はま先生が執筆された本です。
「教えるということ」
とてもシンプルな題名ですが、教育の核心に迫ろうとする気持ちが
ひしひしと伝わってきます。
本のベースは、大村はま先生が講演会をされた時のお話が本になったもので、大村はま先生の教職員生活での経験談が語られています。
私のような若い世代には圧倒的に経験が足りません。
だからこそ、先代の方々のお話や経験談を聞くことによって、自分に消化していくことが必要なんじゃないかなと思います。
教師の仕事
私がはじめてこの本を読んだのは大学三年の時です。
教育関係に携わりたいと決意し、教育について勉強をしていた時にこの本と出合いました。この本を読んだとき、大村はま先生の教師としての歩みに感動し心を打たれたことをとてもよく覚えています。
教師とはどんな仕事なのか、教えるとはどのようなことなのかが書かれており、特に教師の仕事に関しては、「魅力のある教室づくりについて」や「作文の添削の仕方」など、より具体的なことについても書かれています。
作文の添削方法
「作文の添削」ってどのように行うかご存知ですか?
私は、ついこの間まで、漢字を直したり、日本語がおかしくないか確認すればいいと思っていました。でも、なかなか子どもたちに作文力、文章を書く力がついていきません。「どのような添削をすればいいのだろうか」、しばらくの間、もやもやしながらも、今まで通りの添削を行っていました。
そんな時「教えるといこと」に出会い、作文の添削方法が書かれており、読んだ瞬間もやもやしていたものが、スーっと引きました。
この本で大村はま先生が伝えてくれた添削方法は
「子どもの文章を読み、想像し自分だったらどのように表すか共感的に添削する」
というものでした。
例えばある子どもが
「夏休みにプールに行きました。流れるプールに行きました。楽しかったです。」と書いたとします。この文章では、事実が列挙してあるだけで、どのような様子だったのか、どんな気持ちだったのか伝わってきません。
この文章を大村はま先生をまねて添削すると
「夏休みにプールに行きました。とても暑い日でしたが、ひんやりと冷たい水はとても気持ち良かったです。流れるプールでは、水が私の体をぐっと押し、風を切るような速さで進みました。プールから出ると、遊びすぎて少し疲れたけど、とても楽しかったです。」
一見、全然違う分に見えますが、もし自分だったらどのように書くか、を意識して添削するとこのようになります。
子どもはこの添削を見ることにより、表現の仕方や自分の気持ちの伝え方を学ぶことが出来ます。また、国語の学習で大切な「語彙」を増やすことが出来ます。
この方法を実践するようになってから、子どもたちに少しづつ表現する力と語彙力がついてきているなと感じています。
若いときにしておいてよかったとおもうこと。
この本の最後には「若いときにしておいてよかったとおもうこと」というページがあります。これは、大村はま先生が、経験から若い時にしておいたほうがよおいことを記してあります。
その中にの一つに
「うまくいったと思うことを書き残しておく」
というものがあります。
普段の生活の中で、心に残った言葉や、失敗した時の反省、人から聞いたアドバイスなどをノートに書き留めて置く人は多いと思います。
しかし、大村はま先生はこれに加え、さらに「うまくいったと思うこと」についても記しておくとよいということでした。
謙虚な方が多い日本人ではなかなか実践している方は少ないかもしれませんが、成功したことを書き留めておくと、読み返した時に仕事への愛着が深まるそうです。
私はまだそんなにうまくいったことは数少ないですが少しづつ書き記していきたいと思います。
まとめ
私はこの本と出会い数多のことを勉強させていただきました。一回目二回目三回目と、何度も読むとそのたびに新しい発見があります。
もし、教育関係の方で読んでいない方、学生や教育関係の仕事を志している方で読んだことがないようでしたらぜひご拝読ください。
必ずあなた方にとって、忘れられないものになると思います。